1. 自宅で過ごす際に気を付けること

  • 安全対策:
    • 家の中での転倒やけがを防ぐために、滑りにくい床材や手すりを設置しましょう。
    • 鍵のかかる窓やドアを確認して、認知症患者が外出しないようにしましょう。
  • 日常生活のサポート:
    • 認知症患者は日常生活の基本的なことにも支援が必要です。食事、入浴、着替えなどの日常的なケアを提供しましょう。
    • 薬の管理も忘れずに行い、定期的に医師の診察を受けるようにしましょう。
  • コミュニケーション:
    • 認知症患者とのコミュニケーションは理解しやすい言葉で行い、落ち着いて接することが大切です。身振り手振りで会話するのも効果的です。
    • 聞き取りやすい音量でなるべくゆっくりと話しかけ、急かさないようにしましょう。
  • 感情のサポート:
    • 認知症患者は感情のコントロールが難しいことがあります。本人にとってはイライラすることがあっても、うまく伝えることができません。家族は耐え難い感情を受け入れ、サポートすることが必要です。
  • 自己ケア:
    • 家族も認知症患者のケアをする一方で、自分自身の健康にも気をつけましょう。バーンアウト(燃え尽き症候群)といった言葉もあり、真面目に家族と向き合っている方に多く見受けられますので、ストレスを溜めないように心掛けてください。

最も重要なのは、認知症患者を理解し、愛情と忍耐強く接することです。家族のサポートが患者の生活の質を向上させる鍵となります 。

認知症女性

2. 認知症と訪問診療

認知症治療において、訪問診療は有用なアプローチとなります。訪問診療を導入する上でのメリット、デメリットを考えてみます。

  • 訪問診療導入のメリット:
    • 普段の生活状況を確認しながら診療: 訪問診療は自宅で行われるため、患者の普段の生活状況や環境を直接確認できます。ほとんどの医師はお薬を処方する際に処方箋をお渡しして患者さんに内服の指示を出しますが、実際にその薬を飲んでいるかどうかは本人や家族にしか分からずにいます。自宅で診療することで、薬の飲みかけ、飲み忘れ等も見つけることができ、病気の進行や症状の変化を早期に発見し、適切なアドバイスを提供できます。
    • 地域とのつながりを維持: 外来診療を受けるために通院するとなると、移動時間や待ち時間、お薬を受け取る時間なども含めると半日以上かかることもあります。訪問診療の導入によって、患者は外出することなく医療サービスを受けることができ、地域に根ざした生活を維持できます。
    • 家族との時間を大切に: 訪問診療は家族と一緒に受けることができ、医師からの説明やアドバイスを共有できます。

訪問診療のメリットについては前述致しましたが、それではデメリットを考えてみます。

  • 訪問診療の課題:
    • キャンセル件数の多さ: 訪問診療は予約制で行われるため、患者や家族の都合、またデイサービス等介護保険サービスとの兼ね合いによって、日時等変更などがあり、キャンセルが発生することがあります。
    • 開業医からの紹介の少なさ: 訪問診療を利用する患者が増えていますが、かかりつけ医からの適切な紹介が必要です。
    • 家族の思いを聞く機会の不足: 家族の負担を理解し、適切なサポートを提供するために、家族の意見を聞く機会を増やす必要があります。ちなみに当院では医療ソーシャルワーカーが常駐していますので、医師に相談できないこと、診療とは離れたところでご相談したい場合などお気軽にご相談ください。
    • 退院支援の不十分さ: 訪問診療を受けている患者が、急病などで入院した場合、退院後のサポートが不十分な場合があります。

認知症治療は、訪問診療を含めた総合的なアプローチが求められており、患者と家族の協力が重要です。

3. 家族の負担を軽減するために

家族が認知症患者のケアにおいて負担を軽減するために、以下の方法が役立つでしょう:

  • サポートグループへの参加:
    • 認知症患者の家族は、同じ状況を共有する他の家族と交流することで、ストレスを共有し、アドバイスを受けることができます。
    • オンラインまたは地域のサポートグループに参加して、情報交換や感情の共有を行いましょう。
  • プロフェッショナルのサポートを受ける:
    • 認知症患者のケアには専門的な知識が必要です。医師、看護師、ケアマネージャーなどの専門家からアドバイスを受けましょう。
    • 訪問診療やホームヘルパー、デイサービスなどの利用も検討してください。
  • 自己ケア:
    • 家族は自分自身の健康を大切にし、ストレスを軽減するために休息を取ることが重要です。
    • 趣味やリラックスする時間を持つことで、心身のバランスを保ちましょう。
  • タスクの分担:
    • 家族間でタスクを分担し、負担を軽減しましょう。誰がどのタスクを担当するかを明確にすることで、効率的にケアを行えます。
  • 柔軟な考え方:
    • 家族は完璧である必要はありません。認知症患者のケアは日々変化するものであり、柔軟に対応することが大切です。出来ないことを出来ていないと考えるのではなく、出来ることが出来た、と捉えその積み重ねをしていければよいと考えるようにすると良いでしょう。

最も重要なのは、家族が互いに協力し、理解と忍耐を持って認知症患者を支えることです。

4. 認知症患者と地域のつながり

認知症患者が地域とつながりを持つことは、彼らの生活の質を向上させるために非常に重要です。しかし、家族が認知症であることを知られたくないという声も理解できます。しかしながら家族だけで抱えるのではなく、地域の皆さんに相談しながら過ごしていくことが大切ですね。

  1. 地域のイベントや活動に参加:
    • 認知症患者は地域のイベントや活動に参加することで、他の人々と交流し、社会的なつながりを持つことができます。
    • 家族は、認知症患者が参加するイベントを選ぶ際に、プライバシーを尊重しつつ、認知症患者が快適に参加できる場所を探しましょう。
  2. 地域のサポートグループに参加:
    • 認知症患者と家族は、地域のサポートグループに参加することで、他の家族と情報交換や感情の共有を行えます。
    • サポートグループはプライバシーを尊重しつつ、理解ある仲間とのつながりを提供します。
  3. 匿名での参加:
    • インターネットを活用して、匿名で地域とつながる方法もあります。オンラインコミュニティやフォーラムに参加し、質問や意見を交換することができます。
  4. 家族とのコミュニケーション:
    • 家族は認知症患者とのコミュニケーションを大切にし、彼らの意見や希望を尊重しましょう。
    • 認知症患者が地域とつながる方法を一緒に考え、プライバシーを守りながらサポートすることが重要です。

最終的には、認知症患者のプライバシーを尊重しつつ、地域とのつながりを築る方法を選択することが大切です。

認知症患者夫婦
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