「認知症」とは

認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、6か月以上にわたって日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。
初期の頃は、単なる物忘れに見えると思いますが、普段出来ていたことが出来ない(家事や仕事上のミスなど)、お釣りの計算が出来なくなる、道に迷う、憂うつ・不安になる、気力がなくなるなどが見られます。

認知症の主な原因疾患は、脳の変性疾患である「アルツハイマー型認知症」が一番多く、脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。次に多いのが脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による「脳血管性認知症」です。障害された脳の部位によって症状が異なるため、一部の認知機能は保たれている「まだら認知症」が特徴です。その他には「レビー小体型認知症」があります。現実には見えないものが見える(幻視)や、振戦(自分の意思ではなく手足が震えたりすること)などのパーキンソン症状がみられます。
また、感情の抑制が効かず怒りっぽくなったり、社会規範の欠如が見られるといった症状の「前頭側頭型認知症」といったものがあります。
65歳未満で発症する認知症のことを「若年性認知症」と言います。
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス参照) (公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット参照)

アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症

認知症の中で最も多く、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。

脳血管性認知症
脳血管性認知症

アルツハイマー型認知症の次に多く、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によっておきる認知症です。

レビー小体型認知症
レビー小体型認知症

老年期に認知症を呈する病気の一つで、高齢者の認知症の約20%を占めているといわれています。

前頭側頭型認知症

脳の一部である「前頭葉」や「側頭葉前方」の委縮がみられ、他の認知症にはみられにくい、特徴的な症状を示します。

認知症の主な症状

もの忘れ(記憶障害)

  • 数分前、数時間前の出来事をすぐ忘れる(食事したことなども)
  • 同じことを何度も言う・聞く
  • いつも探し物をしている、どこに置いたか分からない(自宅の鍵や通帳なども)
  • 約束を忘れる(病院の診察時間など)
  • 昔から知っている物や人の名前が出てこない、誰だか分からなくなる
  • 同じものを何個も買ってくる(冷蔵庫にあったものを覚えていない)

自分が子供の頃の記憶など、昔の出来事は比較的覚えています(長期記憶)

認知症

見当識障害(時間・場所がわからなくなる)

  • 日付や曜日がわからなくなる
  • 慣れた道で迷うことがある
  • 今が何時かわからなくなり、約束の時間を守ることが出来ない
  • 予定通りの行動が出来ない
  • 季節感が分からなくなり、季節に合わない服装をしてしまう
  • 今いる場所が分からないため、遠くまで歩いて出かけようとしてしまう
  • 自宅のトイレが分からなくなり、迷う

自分と他人との関係性が障害されると、自分と家族との関係や、過去に亡くなったという事実もわからなくなり、「自分の息子を『お父さん』と呼ぶ」ことや、「亡くなった両親に会う、既にない実家が自分の家だと思ってしまうなどがみられます。

認知症アンケート

理解・判断力の低下

  • 申込み手続きや貯金の出し入れができなくなる
  • 状況や説明が理解できなくなる、テレビ番組の内容が理解できなくなる
  • 運転などのミスが多くなる

一度に2つ以上のことを言われる、早口で言われると理解することが難しくなります。いつもとは違う出来事が起こると対応できず、混乱することがみられます。あいまいな表現も理解・判断しにくく、と具体的に伝えることが大切です。

認知症薬

実行機能障害

  • 料理の手順が分からなくなる
  • メニューを考えることが出来なくなる、冷蔵庫にあるものから料理を作ることが出来なくなる
  • 同時に二つのことを並行して行うことが難しくなる

物事を行う時に計画を立て、順序立てて効率良く行うことが難しくなることを「実行機能障害」といいます。

認知症患者

言語障害(失語)

言葉を音として聞こえていても、言語、一連の話として理解することが難しくなりますので、相手が何を言っているのか分からず混乱し、またはイライラしてしまうこともあります。それとは別に自分が考えていることを言葉にして相手に伝えることが困難になってきます。

失行・失認

失行は、など日常的に行っていた動作や物の操作が、運動機能の障害がないにもかかわらず行えなくなることを「失行」といいます。

  • 急須にお茶を入れること
  • 洋服や下着を着ること
  • お箸やスプーンを使ってご飯を食べること

失認は、自分の身体の状態や自分と物との位置関係、目の前にあるものが何かを認識することが難しくなることです。

認知症患者

認知症のBPSD(行動、心理症状)について

上記の中核症状とは別に、いかに示す行動、心理症状「を「BPSD」(Behavior and Psychological Symptoms of Dementia)といいます。このBPSDはすべての認知症患者に出現するわけではなく、個々の状況によって異なります。

  • 幻視、幻聴(誰もいないのに、そこにいると言う)
  • 妄想、もの盗られ妄想(お金を盗まれたなど)
  • 昼夜逆転、睡眠障害(夜なのに日中と勘違いしてしまうなど)
  • 暴言、暴行(何かの理由で怒り出すが、周りはなぜ起こっているのか理解できないなど)
  • 介護への抵抗
  • 徘徊(何かの用事で外出したのに、なぜ外出したのか忘れてしまい、帰れなくなる)
  • 火の不始末
  • 不潔行為(部屋の中で排尿をする、唾を吐くなど)
  • 異食行為(食べ物でないものを口にするなど)
  • 性的問題行動
  • 抑うつ症状(憂うつでふさぎこむ、何をするのも億劫がるなど)

認知症と訪問診療について

認知症治療において、訪問診療は有用なアプローチとなります。以下に、認知症患者への訪問診療の効果と課題を解説します。

訪問診療の効果:
普段の生活状況を確認しながら診療: 訪問診療は自宅で行われるため、患者の普段の生活状況や環境を直接確認できます。これにより、病気の進行や症状の変化を早期に発見し、適切なアドバイスを提供できます。
地域とのつながりを維持: 訪問診療によって、患者は外出することなく医療サービスを受けることができ、地域に根ざした生活を維持できます。
家族との時間を大切に: 訪問診療は家族と一緒に受けることができ、医師からの説明やアドバイスを共有できます。
訪問診療の課題:
キャンセル件数の多さ: 訪問診療は予約制で行われるため、患者や家族の都合によりキャンセルが発生することがあります。
開業医からの紹介の少なさ: 訪問診療を利用する患者が増えるため、開業医からの適切な紹介が必要です。
家族の思いを聞く機会の不足: 家族の負担を理解し、適切なサポートを提供するために、家族の意見を聞く機会を増やす必要があります。
退院支援の不十分さ: 訪問診療を受けている患者の退院後のサポートが不十分な場合があります。
認知症治療は、訪問診療を含めた総合的なアプローチが求められており、患者と家族の協力が重要です。

認知症の方が自宅で過ごしていくために出来ること

安全対策のため、家の中での転倒やけがを防ぐために、滑りにくい床材や手すりを設置しましょう。鍵のかかる窓やドアを確認して、認知症患者が外出しないようにしましょう 認知症患者は日常生活の基本的なことにも支援が必要です。食事、入浴、着替えなどの日常的なケアを提供しましょう。

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